本年度研究実施計画に基づいて研究を実施した結果、以下の知見を得た。 1.実際の結晶構造の効果を想定した2次元格子系でのエネルギー局在構造の解析としてBrennerポテンシャルおよびMorseポテンシャルを用いた2次元格子系を取り上げ、それらの系でのILMの存在性および構造について数値的に解析を行った。その結果、Brennerポテンシャルで構成したグラフェンシート上においてILMが励起されうること、またそれらが一定時間経過後に崩壊することが明らかになった。一方、1次元格子系においてはオンサイトポテンシャルの存在無しにはILMが出現しないことが知られているMorseポテンシャルで結合した格子系においても、2次元格子系においてはその2次元効果によってILMが存在可能であることが明らかになった。これらの成果については、今後学術誌に投稿する予定である。 2.結晶中でのILMの励起メカニズム及び局在維持機構についての知見を得るために、理想的な2次元格子モデル(Fermi-Pasta-Ulam格子)およびその拡張モデルにおけるILMの構造の解析を行った。その結果、正方格子モデルにおいて、1次元型および2次元型の異なるタイプの局在構造が存在することが明らかになった。1次元型のILMについては第2近接相互作用の大きさによって局在構造の形状がひずむこと、また2次元型のILMについては局在エネルギーの増大の結果、局在構造の分岐が生じ、2つの異なる対称性のモードが出現しうることを明らかにした。さらに相互作用ポテンシャルの形状とILMの存在性についても解析を行った結果、相互作用ポテンシャルが現実のモデルポテンシャルに近づくにつれてILMの内部振動数が大きくなることが明らかになった。
|