研究概要 |
イオン導電性高分子に電場をかけると,水和したカウンターイオンが陰極に移動し,陰極側が膨潤,陽極側が収縮することで湾曲が生じ,アクチュエータとしての機能を果たしている.しかしながら,MEMS(NEMS)などのマイクロ・ナノスケールのおけるアクチュエータやセンサとしての利用を考えた場合,マイクロ・ナノスケールにおけるアクチュエータの機能・特性を把握しておく必要がある.本研究では,イオン導電性高分子の表面・界面の力学的挙動の解明,イオン導電性高分子と電極金属薄膜との界面強度が及ぼすアクチュエータの変形特性への影響,表面・界面の力学・電磁場を考慮したマルチフィジックスモデルの構築とイオン導電性高分子アクチュエータの機能を支配する力学パラメータの解明することを目的とする. 本年度はイオン導電性高分子アクチュエータの力学的挙動の実験的解明を目的とし,以下の研究を行った. 1)ナノスケールにおけるイオン導電性高分子膜の力学的特性評価 ナノインデンテーション試験法により,厚さの異なるイオン導電性高分子(Nafion膜)の力学的特性(硬さ,弾性率,降伏応力)の測定を行った. 2)走査プローブ原子間力顕微鏡(AFM)による界面強度測定 電極金属箔膜とイオン導電性高分子との界面強度(密着性)が,アクチュエータの機能を決定するひとつのパラメータとなっていると考えられる.そのため,AFMチップとイオン導電性高分子間との吸着力の測定を行い,AFMチップに施した金属メッキの種類により,高分子表面との吸着力が変化することがわかった.
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