研究概要 |
超微小薄膜構造を持つ機能性材料の強度および機能性の低下機構を明らかにすることを目的とし,ナノスケール微小薄膜(一層/多層)構造を持つ強誘電体・強磁性体材料について,変形を受ける場合(機械的拘束条件)における原子構造の不安定性ならびに電気的・磁気的機能の不安定性を第一原理量子力学解析により検討した.本年度は強誘電体PbTiO_3を対象とし,(001)表面の面内方向自発分極およびPt/PbTiO_3/Pt多層膜の面外方向自発分極構造について,PbTiO_3の終端原子および面内ひずみが自発分極の不安定性に及ぼす影響を明らかにした.(001)表面では,TiO_2終端では面内強誘電分極のみが起こり(1x1)周期構造をとるが,PbO終端ではそれに加えてAFD回転が発生し(2x2)周期となる.[110]方向への分極が[100]方向よりも安定になることを見出すとともに,面内等方引張りにより分極が増大・AFD回転が抑制される(圧縮では逆)ことがわかった.非等方引張・圧縮により分極方向のローテーションが起こることも明らかとなった.また,Pt/PbTiO_3/Pt多層膜については,面外自発分極を起こすために必要なペロブスカイト層の最小厚さを求め,それが面内ひずみに強く依存する(引張りにより最小厚さが増大)ことを示した.基板材料としては,PbTiO_3の正方晶に近い格子定数を持つSrTiO_3が用いられることが多いが,この基板上に積層した多層膜を想定した場合,自発分極に必要な最小厚さはTiO_2終端では約24Å,PbO終端では約16Åであると求められた.
|