研究概要 |
1.SUS304鋼における疲労過程の漏洩磁界分布の観察 SUS304鋼について両振り(R=-1)の平面曲げ疲労試験を行い,疲労過程の磁気特性の変化を観察した,実験では,規定繰返し数に達することに疲労試験を中断し,試験片の漏洩磁界分布をMI(Magneto-impidance)センサを用いて測定した.その結果,負荷繰返し数の増加と伴に,応力集中部において漏洩磁界の増加または減少が観察された,変化の増加および減少の傾向は試料の着磁方向に依存した.またこの漏洩磁界分布の変化が最も大きな位置において,き裂が発生した. 荷重振幅が疲労限度以下,すなわち負荷繰返し数1.0×10^7回に達した時点で試験片が破断しなかった場合では,負荷繰返し数の増加と伴に次第に漏洩磁界分布の変化は小さくなり,安定化することがわかった. また,き裂が発生し破断に至った場合では,き裂発生以前の漏洩磁界の変化速度はき裂が発生しない場合と比較して大きいことがわかった.これらの結果より,この漏洩磁界分布の変化を用いた疲労損傷の評価が可能となるものと考えられる. 2.SQUIDを用いた磁界分布の測定 SQUID(超伝導量子干渉素子)は,地磁気の5000万分の1以下の磁界を検出できる高感度磁気センサであり,従来の磁気センサでは検出できなかった欠陥による微小な磁界変化を捉えることが出来る可能性がある.本研究では,SQUIDを用いた計測システムを構築し,その動作特性について検討を行った.その結果,SQUIDを用いて得られた磁界分布の変化から10μm程度の微小な磁性体の検出が可能であることがわかった.また電流が作る磁界分布の測定を行い,欠陥を模擬した半円状の切欠きによって生じる磁界の変化を検出できることがわかった.
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