研究概要 |
1.SUS304鋼における疲労過程の漏洩磁界分布の観察 疲労過程における磁気特性変化を調べるために,SUS304鋼についての平面曲げ疲労試験を行い,漏洩磁界分布の変化を観察した.平成18年度では両振り(R=-1)で実験を行った.平成19年度では応力比を変化させて疲労試験を行い,応力比による影響を検討した結果,次のような知見を得た.(1)応力比R=-0.5の場合においてもR=-1の場合と同様に,負荷繰返し数の増加と伴に応力集中部において漏洩磁界の増加または減少が観察された.(2)疲労過程における繰返し変形によるマルテンサイト変態への影響を調べるために,ひずみゲージを用いてひずみ幅の変化を測定したところ,ひずみ幅の増加および減少と磁界変化率の変化に対応関係が見られた.(3)R=-1の場合と比較して,R=-0.5の場合における疲労過程初期段階の漏洩磁界の変化は小さい. ひずみ変化と磁気特性変化に対応関係が見られることから,疲労過程における加工硬化および加工軟化などの組織変化を磁気特性変化により評価できる可能性があることがわかった. 2.SQUIDを用いた磁界分布の測定 SQUID(超伝導量子干渉素子)は,地磁気の5000万分の1以下の磁界を検出できる高感度磁気センサであり,従来の磁気センサでは検出できなかった欠陥による微小な磁界変化を捉えることが出来る可能性がある.本研究では,SQUIDを用いた計測システムを構築し,その動作特性について検討を行った.その結果,SQUIDを用いて得られた200μm幅の電流路およびそのなかの欠陥の影響による磁界変化を検出できることがわかった.SQUIDを用いれば,高感度かつ高分解能でSUS304鋼内の磁性相を検出できると考えられる.
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