研究概要 |
平成18年度は,軸直角方向振動によるボルト締結体のゆるみ・疲労試験機の改良を行い,ボルト締結体の締付け力低下を含めたゆるみ発生のメカニズムと疲労き裂長さとの関係を調査した.さらに,軸直角方向振動下におけるボルト締結体の疲労強度への塑性域締結やボルトサイズ(寸法効果)の影響を調査し,測定用ボルトに関する基礎実験を行った. 平成18年度の研究成果としては,以下の通りである. (1)ゆるみ・疲労試験機の改良により,ボルト締結体に負荷できる軸直角方向加振力振幅の上限値を約2倍にすることができた。 (2)軸直角方向振動によるボルト締結体のゆるみ・疲労現象において,高サイクル領域でゆるみを生じる場合,ボルトの第1ねじ谷底もしくはボルト首下部で発生・進展した疲労き裂による締付け力の低下と疲労き裂によるボルト剛性の低下によってボルトがゆるみ回転を生じることがわかった. (3)ボルト締結体の疲労強度への塑性域締結の影響については,ボルトの軸方向疲労の場合に一般に塑性域締結が疲労限度向上に有効であるのに対して,軸直角方向振動による疲労の場合には,疲労限度が低下することがわかった.また,ボルトサイズの疲労強度への影響に関しては,ゆるみ・疲労破壊を生じない軸直角方向加振力振幅の下限界値で評価する限り,ボルトサイズに比例して大きくなった.しかし,応力で評価した疲労強度で見た場合にはボルトサイズに反比例する寸法効果の傾向が確認された.寸法効果に関する詳細な研究については、平成19年度に明らかにする予定である。 (4)ボルトが受ける軸直角方向振動力を測定する測定用ボルトの開発については,初期実験としてボルト締結体に作用する振動方向を限定し,ボルトに6枚のひずみゲージを貼付して実験を行った.その結果,ボルトに作用する曲げ応力が測定可能であることが分かった.今後,振動方向を限定しない測定用ボルトの開発を行う予定である.
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