高精度で制御された既知の外力下で、多結晶材料に見られる変形誘起の粒界近傍領域の実験的観察を実施する方法論について十分な検討を行なった。同時にこれら粒界をはさんで生ずる局所変形場を精密に測定することで、結晶粒/結晶粒界の存在に起因した複雑な力学事象を捉えるための数理モデルの検討を行なった。研究実施期間中に得られた結果の概要は以下の通りである。 1.申請の無酸素銅を、既設の不活性ガス雰囲気炉内で溶融の後、十分に結晶粒を粗大化させるように炉冷する。ついで、作成したインゴットから粒界三重点を含むように選択的に切り出した後、微小試験片を作成した。 2.微小試験片の初期データとして、既設の結晶方位解析装置ならびに画像解析装置により、微視的変形挙動を支配する結晶方位データならびに粒界形状等のデータを収集した。 3.現有の走査型原子間力顕微鏡(AFM)内へ申請設備である高精度変位制御ステージを導入することで構成されたAFM内微小引張試験装置により、2.で作成した試料に対する単軸引張試験を行い、所定の巨視的ひずみレベルで誘起される結晶粒内/粒界近傍の局所変形場のその場観察を行なった。 4.3.で得られた結晶粒内における格子の位置情報より、ミクロ変形データであるひずみを算出した。同時に、ひずみの一次/二次勾配を数値的に算出し、これら空間勾配に随伴した転位密度テンソルの評価を行なった。
|