研究概要 |
通常の放電加工は油または水などの加工液中で放電を発生させて除去加工を行う.それに対して申請者は,加工液の液面(すなわち気液界面)で放電を発生させると荒加工の条件でも短時間で表面粗さが低下し,光沢のある特徴的な加工面が得られることを見出した.これは液中放電から気中放電へ移行することが関与していると考えられる.本研究はこの現象を利用して仕上げ加工工程を大幅に短縮することを目指すものであり,そのために気液界面における放電加工現象を解明すること,本加工法を3次元形状に適用すること,本加工を安全に行う方法を考案することを目的とする.平成18年度は主として本加工における加工現象の解明に取り組んだ. まず,加工時間を変えて本加工を行い,液中放電から気中放電へ移行する前後で工作物加工面の状態が変化していく様子を電子顕微鏡および光学顕微鏡を用いて観察した。その結果,気中放電へ移行した直後は加工面の状態が位置によって異なり,表面張力によってまったくの平面が形成されたように見える箇所が存在する一方,球形の加工くずが溶け切らずに残ったと思われる痕跡が多数存在する箇所や,周囲よりも一段落ち込んだくぼみの中に加工くずが集まっている箇所が存在することがわかった.このような観察結果から,極間に存在する加工くずが溶融して加工面の凹凸を埋める作用をしている可能性が考えられ,加工くずの挙動に着目して加工現象を考察する必要があると考えられる. 次に,材料の種類と極性の組合せを様々に変えて加工実験を行った.その結果,鉄系の材料を陰極として用いた場合に本加工法に特有な加工面が得られることがわかった.ただし,材料の組合せと極性に応じて適切なパルス条件を選択すればどの場合でも本加工の特徴が現れるのか,鉄系の材料であることや陰極であることが本質的に必要であるのかについては未解明である.
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