研究概要 |
断続切削における工具・被削材間への微量通電が切削機構へおよぼす影響を明らかにすることを目的とし,超硬工具によるBN添加鋼の正面フライス切削において工具摩耗,切削抵抗および仕上げ面粗さの測定を行い,断続切削における工具・被削材間への微量通電が切削特性値に与える影響について標準鋼の場合と比較し検討を行った.以下に本研究で得られた結論を示す. (1)工具・被削材間に流す電流量によって,切削特性値に変化が現れ,適切な電流量を選択することによって,単に絶縁して電流が流れなくして切削する場合よりもよい切削特性値を示す切削条件が存在する. (2)BN添加鋼では,電流量に対する切削抵抗の挙動が,電流量に対する工具摩耗量の変化傾向にほぼ一致している。このことから,工具摩耗を抑制するための最適な通電条件を選定する際,切削抵抗の変化に注意すれば,最適な電流量のおおまかな目安になり得る。 (3)微量通電の効果は低酸素雰囲気中と比べ大気中で切削を行った方が受ける影響が大きく,微量通電による酸素吸着が,切削機構へ影響をおよぼした要因のひとつであると考えられる. (4)標準鋼と比べBN添加鋼は,微量通電による切削機構の改善効果が大きい.また,BN添加鋼では,低酸素中でも微量通電の効果が得られることから,最適な電流量と低酸素を組み合わせることによって,高速ドライ切削における工具摩耗を大幅に抑制できる.低酸素中でも効果が認められたことから,微量通電が工具表面に生成する酸窒化物系保護膜特性へ影響をおよぼした可能性が考えられる.
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