研究概要 |
高分子系しゅう動材料の代表格であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に,異なる物理化学特性を有するカーボンブラック粉末を添加することで複合材料とし,その摩擦摩耗特性と添加したカーボンブラックの物理化学特性との関係について,一通りの実験結果を得た.今年度はこれらの実験データをもとに,カーボンブラック添加PTFE複合材料の摩耗メカニズムを明らかにすることを目的とし,カーボンブラックアグリゲートのモデル化を行い,摩耗メカニズムについて解析した.カーボンブラックの代表的な物理化学特性は,平均粒子径,窒素吸着比表面積,およびDBP吸収量の3項目であるが,これらはいずれもアグリゲートのモルフォロジー特性を表している.そこで,球状の粒子が任意の溶着面積を有して数珠状につながったアグリゲートの単純なモデルを考え,gファクターと名付けた因子を用いて,これらのデータを整理した.その結果,gファクターと摩擦摩耗特性との間には良い相関が見られ,カーボンブラックのアグリゲートがPTFEの繊維あるいは分子鎖と絡み合いやすい形状をしているほど,耐摩耗性が向上し摩擦係数が上昇するというメカニズムが提唱できた.また,複合材料としゅう動させた相手面には移着膜が形成され,その移着膜のXRDスペクトルを取得した結果,グラファイトのピークが検出され,摩擦によるカーボンブラックのグラファイト化が確認された.
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