研究概要 |
脳動脈瘤の血管内治療で用いられている手技の多くは,血流速度を減少させ,自然治癒を促進させる方法であり,血流速度を測定することは治療方法の策定および検証に非常に大切なことは良く知られているものの,速度を定量的に測定する方法は皆無である。そこで脳動脈瘤の新しい治療法として注目を浴びている血管内治療法の検証および新たな治療法の開発をするため,決定的に重要な役割を果たす脳動脈瘤内の血流速度情報を,治療中に測定できる方法を開発することを目的とした。 治療前(すなわちインプラント挿入前)であれば,MR(核磁気共鳴画像装置)血管造影法を用いることで血流速度を計測することができる唯一の可能性があるが,大動脈瘤と違い脳動脈瘤は非常に小さいため解像度が低いMRは使用が制限される。さらに,治療後(インプラント挿入後)では,インプラントの多くが金属製であるため,磁気の乱れの影響から画像を得ることさえ難しい。一方,工学分野では流体と一緒に移動する粒子にレーザー光を照射しその反射波を画像化することで速度計算を行うParticle Image Velocimetry (PIV)法や,動脈瘤ファントム内での渦移動を画像から追跡するVortex Center Path line method (VCP)法があり,in-vitroでの流体計測に多大な成果を上げている。 本研究は,治療中および治療後の診療に用いられる血管造影装置の連続画像に着目し,上記の工学的視点からのプログラムを開発した。具体的には,治療の際に用いられる血管造影装置で得られた画像から,流体力学と画像情報処理に基づいた血管造影剤の渦軌跡を追跡することにより,動脈瘤内の血流速度を計測する方法を開発した。このような流体力学の手法と画像処理といった工学的なアプローチを適用したことに本研究の特色がある。
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