研究概要 |
粘弾性体を含む固液混相流解析を行う準備として,最初に,二相系格子ボルツマン法(以下LBMと呼ぶ)に固体壁上の濡れ性を考慮した境界条件の検討を行った.この境界条件は,Briantら(2004)のアイデアに基づく手法を導入し,壁における流体と固体との接触角を規定するものである.この手法を用いて,水平な壁上に置かれた単一気泡の静的接触角θ_wを計算したところ,70°〜110°の範囲でYoungの理論と良く一致することがわかった.また,壁面上を移動する単一気泡の非定常計算を行うことにより,動的な接触角の詳細について調べた.種々の濡れ性条件に対してシミュレーションを実施したところ,いずれの条件に対しても,前進接触角は後退接触角よりも20°〜30°ほど大きな値をとることがわかった.次に,本手法を用いて,流路内に複数の物体を含む流れ場における上昇気泡流のシミュレーションを行った.本計算では,固体表面が(a)親水性(θ_w=70°),および(b)疎水性(θ_w=110°)についての計算を行った.(a)では,気泡と物体は接触しやすくなるため,気泡は物体が密になっている領域中央部を上昇し,物体との接触が頻繁に繰り返される結果が得られた.一方,(b)では気泡と物体は接触しにくくなり,気泡は徐々に物体を避けるような挙動を示した.以上から,固体壁の濡れ性の相違によって,気泡の挙動や流動現象が異なることがわかった.最後に,粘性がせん断速度に依存するように改良した非ニュートン流体解析のためのLBMを提案した.二次元チャネル流の計算結果から,既存のLBMに比べて本手法は安定性に優れており,計算精度も良いことがわかった.今後は,上述の結果を発展させて,赤血球のような粘弾性体を含む固液混相流のためのシミュレーション法の開発を行っていく予定である.
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