研究概要 |
低密度領域やマイクロ・ナノデバイス中の流れ場に代表される高クヌッセン数流れでは,連続体である流体としてのマクロな特性よりもむしろ原子・分子オーダーの影響が非常に強く現れ,その結果マクロ領域では現れない特異な物理現象が発現する.そのため,このような高クヌッセン数流れを総合的に理解するためには,流れ場の原子・分子オーダーでの理解と固体表面近傍における原子・分子の挙動を理解する必要がある.本研究では,分子センサーによる計測や分子運動に基づく理論解析により,高クヌッセン数流れの解析を行った. 気体分子と固体表面との相互作用を調査するため,気体分子の計測にREMPI法を適用した面・分子干渉実験装置の構築を行った.REMPI法は気体分子の光共鳴励起を応用した分光学的手法であり,従来の質量分析器を使用した気体分子の数密度,速度分布の計測に加え,回転エネルギーの計測が可能である.本実験装置を利用した気体分子と固体表面の相互作用の精緻データの取得に向けた実験が進行中である. さらに,固体表面の圧力計測法である感圧塗料(PSP)を低密度気体流やマイクロ・ナノ流れの解析に応用するため,新たなPSPの開発を行った.PSPは光励起した発光分子の酸素分子による消光を利用する手法であり,分子センサーに基づく計測法なので,高クヌッセン数流れの解析に有用と思われる.特に,マイクロ・ナノデバイスへPSPを適用するため,ナノ分子膜(LB膜)の形成手法をPSPに応用した感圧分子膜を開発した.発光分子として用いるメゾポルフィリン錯体の中心金属により圧力感度が大きく変化することを示し,それぞれの発光分子に対して圧力計測に最適な圧力範囲条件を明らかにした.また,気体分子運動論に基づく理論解析を行い,PSPの発光強度と酸素圧力および分子数密度流束との関係を明らかにした.
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