研究概要 |
抵抗低減流体である希薄高分子水溶液の壁面極近傍における流動特性を明らかにすることを目的とし,壁面よりナノメートルオーダーでの観察が可能なエバネッセント光顕微鏡を用いマイクロチャンネル内の壁面極近傍の速度分布測定を行った.さらに,蛍光粒子の壁面からの距離の検定実験を行った.本年度得られた研究結果は以下のようにまとめられる. (1)粒子位置検定実験・・・本実験の最も重要なパラメータの一つである粒子位置を測定可能な実験装置を作製し,様々な条件で正確に粒子位置を測定した.その結果,入射角が大きくエバネッセント光のしみ出し深さが比較的浅い場合,実際には従来得られていたしみ出し深さの理論式よりも深い位置まで粒子が観察されることを明らかにした.しみ出し深さが深くなるとこの傾向は弱くなり,従来の理論式より得られるしみ出し深さに近くなることを示した. (2)高分子添加が壁面近傍ブラウン運動に及ぼす影響・・・高分子を希薄な条件で添加することにより,静止状態の壁面近傍のブラウン運動は蒸留水と比較して抑制されることを明らかにした.そして,この抑制効果は流動状態で非常に高くなることを示した. (3)壁面近傍の速度分布測定・・・ニュートン流体である蒸留水の速度分布は壁面からの距離が130ナノメートル〜220ナノメートルの範囲で理論式である二次元ポアズイユとほぼ一致した.一方,希薄高分子水溶液の速度分布は二次元ポアズイユ式とは一致しないこと,壁面に粒子が吸着している場合としていない場合で大きな違いが見られることを明らかにした.
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