研究概要 |
近年, 関心が高まっている省エネルギーや環境保全の対策の1つとして, 流れの遷移, 剥離, 抵抗, 流体音, 伝熱などの自在な乱流制御手法の確立が期待されている. 本研究では, 大気境界層や航空機などの高速輸送機器周りなどの実現象に近い形状でかつカノニカルな体系として, 壁が存在する外部流, すなわち乱流境界層を対象とする. 本年度の研究業績は以下の通りである. 1. 乱流境界層の高精度データベースの構築 高精度乱流モデルの構築・検証などに必要不可欠な各種乱流統計量を長時間にわたって取得した. これらのデータベースは熱流体工学の進展に役立つものである. 2. 乱流摩擦抵抗低減制御アルゴリズムの確立 摩擦抵抗低減にはレイノルズ応力の減少が必須である. 摩擦抵抗係数とレイノルズ応力の関係式として2002年にFIK項等式が提案されている. しかしながら, 外部流である境界層においてはその関係が不明瞭であった. 本年度では境界層におけるFIK項等式を再度見直し, より明確な意味を持つ項等式を導出することに成功した. その結果, 摩擦係数に寄与するレイノルズ応力の重み付が内部流の場合と相違し, 全空間において等しい重み付であることが分かった. また, 1. で構築した高精度データベースを用いて, 新たな項等式が正しいことを確認した. さらに従来のFIK項等式との差異を調査した. その結果, 壁面摩擦係数への影響について, レイノルズ応力項と層流(ストークス)項の寄与は減少, 非一様項は増加することが分かった.
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