研究概要 |
化学反応と物質混合分離の新しいプロセスを実現するツールとして近年注目されるマイクロリアクタの効率的な最適化には,1〜数百ミクロン幅のマイクロ流路内の気体-液体や液体-液体の接触面(界面)を含む二相流現象を詳細に予測できる数値計算技術が必要不可欠である。そこで本研究では,従来法よりも高精度の界面捕捉・追跡能力,高い数値安定性と計算効率に加えて,従来法と同等の解析要求への柔軟な対応性を備えた,マイクロ流路内の二相流問題に適用可能な新しい界面追跡計算法の開発を目的とする。 実施2年度目の本年度は,前年度購入した計算機を使用し,本研究者らが提案するフェーズフィールドモデルに基づく高密度比二相流計算手法と,格子ボルツマン法に関する知見を基盤として開発を進め,以下の成果を得た。 1.本計算法の精度を定量評価するため重力下の2次元液柱崩壊の数値実験を実施し,固体壁面上の気液界面挙動に関して本計算結果が室内実験結果と良く一致することを確認した。 2.自由エネルギーを利用して気相・液相と固体壁表面との接触性(濡れ性)を考慮する簡素な境界条件で静的接触角を約45〜135度で任意かつ安定に設定できることを確認した。 3.濡れ性境界条件を組み込んだ計算コードを用いた2次元液柱および3次元液滴の静的毛管力問題の数値結果と理論解との比較により毛管力が流れ場で適切に再現されることを確認した。 4.濡れ性が不均一な固体境界を伴う密度比約800(空気-水相当)の非圧縮性二相流の本法による基礎的数値実験で次の結果を得た。(1)過去の可視化室内実験同様,矩形流路の親水性壁面部分では,毛管力により気液界面挙動が瞬時局所的に加速されるとともに流れ場全体が加速される。(2)固体壁面に付着する液滴は毛管力の差によって撥水面から親水面へ移動し,液滴の移動速度と分裂発生の有無は接触角度差と表面張力の大きさに依存する。
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