化学反応と物質混合分離の新しいプロセスを実現するツールとして近年注目されるマイクロリアクタの効率的な最適化には、1〜数百ミクロン幅のマイクロ流路内の気体-液体や液体-液体の接触面(界面)を含む二相流現象を詳細に予測できる数値計算技術が必要不可欠である。そこで本研究では、従来法よりも高精度の界面捕捉・追跡能力、高い数値安定性と計算効率に加えて、従来法と同等の解析要求への柔軟な対応性を備えた、マイクロ流路内の二相流問題に適用可能な新しい界面追跡計算法の開発を目的とする。 実施最終度目の本年度は、これまで格子ボルツマン法に関する知見等を基盤として開発してきたフェーズフィールドモデルに基づく高密度比二相流計算手法の評価と拡矧こついて以下の成果を得た。 1.濡れ性境界条件を組み込んだ本計算法の精度を定量評価するため無量力下の2次元平板問および3次元矩形管内の気液二相流の数値解析を実施した。空気-水および空気-エタノール系で静的接触角56度、61度の表面を持つ平板・管の空隙100μm〜5mmの条件下で、毛細管力により移動する気液界面位置の時間変化に関する数値結果が1次元理論解と良く一致した。 2.空気-水系で一辺750μmの正方形断面流路内の単一スラグ気泡挙動の数値解析を実施し、接触角45度、60度の条件で気泡の移動速度や内部圧力増加が適切に予測されること、かつ安定に解析を実行できることを確認した。 3.温度や溶質濃度に依存する表面張力効果を考慮可能なフェーズフィールドモデルを文献に基づき新たに導入して本計算法を拡張した。空気-シリコンオイル系で一定の温度勾配がある無重力下の2次元単一気泡挙動解析を実施し、不均一な表面力が誘起する界面近傍のマランゴニ流れによる低温領域から高温領域への気泡の移動が再現され、本計算結果が既存の3次元実験結果・数値解析結果と定性的に一致することを確認した。
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