研究概要 |
木星などの外惑星に対する大気圏突入では突入速度が非常に高いため,空力加熱の大部分は衝撃波背後の高温気体から放射される輻射によるものである.輻射の放射・吸収過程は,原子・分子の内部エネルギー状態,電子密度,電子温度に大きく依存するため,衝撃層内部の熱化学過程を精度良く評価することが必要である.しかしながら,木星大気の主成分である水素に関しては熱化学モデルが十分に確立されていない. 本研究では,木星などの外惑星への大気圏突入を視野に入れて,水素の熱化学モデルを構築し,大気圏突入時の非平衡流シミュレーションをより高い精度で実現することを目指した.飛行速度が高く,実験が困難な条件であることから,主に準古典的衝突(QCT)解析や量子力学的手法により得られたデータに基づいてモデルの構築を行った. まず,水素分子の緩和過程について,QCT解析により得られたデータに基づいて緩和時間を決定し,多温度モデルにおける緩和時間パラメータへの組み込みを行った. さらに,水素原子の電離過程について,内部モードの遷移レート方程式を輻射輸送計算と同時に解くことで,電離速度を計算することが可能となる手法を熱化学非平衡流コードに対し組み込んだ. これらのモデリングにより,水素の極超音速流に対する熱化学非平衡流コードの構築に成功した.構築したコードにより,水素流の衝撃波背後に形成される非平衡領域の解析を実施した.これまでの解析結果では,主流条件の選定が不十分であったこともあり,衝撃波背後での非平衡性が顕著となる結果が得られなかった。今後,モデルのチューニングなどを施し,木星大気圏突入時の空力加熱を実施する予定である.非平衡性が顕著となるかどうかを調査するとともに,空力加熱への影響などを評価する.
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