研究概要 |
高温型燃料電池のひとつである固体酸化物形燃料電池において,電極微細構造よりは大きくかつセル構造の代表寸法より小さいスケール(メゾスケール)でセル表面に凹凸部を設け,その形状を制御することで発電面を高密度化し電池性能を向上させることを提案し,メゾ凹凸構造の影響を実験的に明らかにするとともに,解析的にその効果の裏づけを示すこと,また系統的な数値解析を行うことで有効なメゾ構造についての指標を得ることを目的として研究を行った.具体的には,メゾ凹凸構造をもつセルを自作し単セルに対する発電実験を行い,セルの特性をi-V測定やインピーダンス計測により評価し,得られた結果を凹凸のない通常のセルの実験結果と比較することで,セル面のメゾ構造を制御することの効果を明らかにした.セルの個体差に起因する性能差を,メゾ構造による性能差と区分するため,分割電極を用いる評価方法を独自に開発し適用した.その結果,電解質への溝加工により電極-電解質界面面積を約60%増加させた場合に,溝加工を施さない通常セルに比して20〜30%の出力の向上が得られることを確認した.また,メゾ凹凸構造をもつセルについて,イオン伝導,電子伝導,多孔質電極内のガス拡散,電気化学反応等を考慮に入れてモデル化し,2次元数値解析を行うことにより,単セル性能に及ぼす上記メゾ凹凸構造の影響を検討した.その結果,多孔質電極で進行する電気化学反応は電極に一様に分布しているわけではなく,電極-電解質界面極近傍で集中的に生じており,上記メゾ凹凸構造の導入で見かけの電流密度が増加することはこれに因っていることが明らかとなった.
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