研究概要 |
平成18年度は,計画通りポラライザ・アナライザ,光学干渉フィルタ,水銀ランプ,高感度CCDカメラ,その他レンズ等の光学物品を新規購入して現有の倒立型顕微鏡に組み込み,偏光観測用の実験系を構築した.レーザや水銀ランプ光源からの光をポラライザと対物レンズを介してマイクロ流路に照射し,蛍光分子の蛍光を対物レンズとアナライザを介して高感度CCDカメラによって撮影した.現在の蛍光分子と光学系では励起光の反射光および偏光度の小ささによる低S/N比が問題となっており,平成19年度では,環境光の遮断などの装置性能の向上を目指す.また,昨年度末にフォトマルチプライヤ(PM)を2対新規購入しており,ダブルパルスレーザやコリレーションCCDカメラによる偏光度の計測だけではなく,励起光と蛍光をPMで同時計測することにより偏光度を計測するシステムの構築を目指す.また蛍光染料・粒子として,ローダミンBおよびDuke Scientific Co.の蛍光粒子(直径1〜0.1μm)を対象として,その偏光度やS/N比について検討を行っている. これに加え,温度計測の校正用試験対象として,温度センサ付設マイクロ流路を製作し,その温度センサの検証実験も終えている.センサは,エマルジョン塗布板や電子ビーム(EB)によって製作したエッチングマスクを用いてガラス基盤に成膜した薄膜レジスト(ZPN等)と,スパッタリングによる金属薄膜生成技術を併用することにより製作した.センサの種類は,単一金属から構成される安価な薄膜測温抵抗体と計測の空間分解能が高い薄膜熱電対の2種類である.薄膜金属は,測定精度と安定性が高い白金Ptの他に,安価なAlやガラスヘの密着性が高いクロムCrを用いた.これらのセンサ付設基盤の上にマイクロ流路を密着させ,薄膜ヒータによって加熱・温度変化させた流体の温度を流路に沿って測定し,センサの校正と性能評価を行った.その結果,±0.5℃の精度を有するセンサの製作が確認できた.また薄膜厚さが200nm以上では,センサの特性はバルクのそれとほぼ等しくなり,いっぽう200nm以下では薄膜特有の電気的性質を示すことが分かった.
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