当研究の最終目的はバイオ燃料のディーゼルエンジンでの燃焼特性を再現できる化学詳細反応機構を作成することである。その中で1年目となる平成18年度は、通常の炭化水素燃料を用いた場合の燃焼特性を把握することである。 そこで本年度はディーゼルエンジンで特徴的なすす生成に着目し、通常の燃料を用いた燃焼場でのすすの成長過程を検証した。ただし、ディーゼルエンジンでの燃焼は拡散燃焼であり、化学反応に加え拡散等の影響が複雑にからみあった現象である。そのため、すすの成長メカニズムはいまだに不明な点が多いのが現状である。そこで本研究では拡散、空間的不均一性等の事象を複雑にする原因を排除し、予混合、等温の条件を再現できる流通式反応管を用いて、純粋に化学反応のみに注目し、すすの成長過程を測定した。燃料はもっとも単純な芳香族であるベンゼンを用い、ガスクロマトグラフィー4重極型質量分析器を用いて生成物を計測した。実際に観測された生成物は、燃料であるベンゼン、2つの6員環からなるナフタレン、ビフェニル、3つの環からなるアントラセン、フェナントレン、フルオレン、また2つの炭素原子からなるアセチレン、エチレンである。 すすの成長過程は温度によらす、ベンゼンから水素原子が脱離し、フェニルラジカルが生成され、2つのフェニルラジカルが結合し、ビフェニルが生成される。さらにはアセチレンの付加等によりフェナントレンが生成するルートが支配的であることが確認された。 これらの成長は1080Kを超える温度で活性化することが実験より確認された。またこの実験を再現する計算によると、1400K程度以上では、すすへの成長よりも、ベンゼンからより小さい炭化水素への分解が支配的であることも確認された。
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