研究概要 |
本年度では, 昨年度に引き続き, 受動的歩行の運動解析において, 歩行ロボットの遊脚が地面に着地する瞬間のロボットの状態(これを衝突点と定義する)に着目して, 衝突点から次の衝突点への状態遷移写像(ポアンカレマップ)を解析的に導出し, それを用いて構造解釈を詳細に行なうことで, 「受動的歩行が何故安定になるのか? 」の解明を目指した. 今年度はまず, 一歩行周期に対するポアンカレマップだけでなく, 二周期, 四周期歩行と歩容が分岐していった状態に対しても, 一周期歩行を行っている場合と同様にポアンカレマップを考えることができ, さらに, 受動的歩行のシステム内に, 受動的歩行がもつ自己安定性と強い関係にあるフィードバック構造が階層的に存在しており, 環境やロボットの物埋パラメーターに応じて最も適当なものが選択されている構造が存在している可能性について考察を行った. 一方で多脚の受動的歩行に関する研究も行い, 四脚の受動的動歩行ロボットにおいても安定な受動的歩行が起きることを確認し, また, 犬や馬などの動物の歩容と同様に, 胴体の剛性や坂道の傾斜角に応じてpace, walk, trotと歩容が変化することを確認した. さらに, もっと多脚の場合(最大20脚)においても受動的歩行が実現出来ることを示した. これは, 人を含む哺乳類だけではなく, 昆虫のようなサイズの小さい生物の歩容においても, 受動的歩行が示唆する骨格系が持つ歩容に対する自己安定性が, 安定な運動の生成に重要な意味を持つ可能性を示唆するものである.
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