研究概要 |
素材の手触りのような複合的な触覚情報をできるだけ単純な機械インターフェースで呈示することを目指す。触覚を再現するには,触対象の物理的因子をそのまま呈示する必要はなく,皮膚内部の触覚受容器の活動を一致させればよい。そこで,本研究では,触覚受容器の周波数応答特性を利用して,単純な振動刺激で受容器を選択的に刺激する方法を提案する。この振動刺激を合成することによって,ヒトが触対象をなぞった際の受容器活動を再現し,あたかも本物の触対象に触れたかのように錯覚させる触覚呈示法を確立する.本研究では,これを実現するために,触対象をなぞった際の皮膚の変形挙動と触覚受容器の活動を解析し,その受容器活動を振動刺激で再現する機械インターフェースを構築する事が目的である. 本年度は以下の研究を行った. 1.ヒト指腹部有限要素モデルと触覚受容器応答モデルの構築 ヒト指腹部有限要素モデルを利用して,皮膚内部の触覚受容器の活動を推定する手法を確立した。触覚受容器の活動は,ひずみエネルギとの相関が知られていることから,触覚受容器位置でのひずみエネルギ分布の変動と周波数応答特性を考慮して,触覚受容器の活動を推定した. 2.振動刺激を用いた圧感の呈示法の確立 1の触覚受容器応答モデルによって5Hz以下の低周波振動によるSA I受容器の活動を推定し,それと同等の振動刺激を実際に与えることにより,振動ではない静的圧覚を呈示できることを心理物理実験により実証した. 3.波長伝達による粗さ感の呈示法の検討 触対象の空間波長に基づいて振動刺激を生成することで,粗さ感が呈示できることを心理物理実験によって確認し,触覚伝達を試みた. 4.超音波振動の振幅変調による触感呈示法の検討 超音波振動を触覚知覚閾で振幅変調することにより,直接振動を与えたときと同じように刺激を与えられることを確認した.これにより機械インターフェースの小型化できる.
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