研究概要 |
平成18年度は,既存の仮想拘束運動解析システムを利用して,任意方向から被験者の手先に加えられる力負荷に対する心理学的実験を実施し,人間の手先力知覚特性には方向性があることを新規に発見した.そして,その知覚特性は運動特性と強い相互関係があることを示した.主要な結果は以下の通りである. 1.人間の手先力知覚特性における方向性 人間の手先力知覚特性が方向性を有しているかどうかを明らかにすることを目的として,健常者6名による測定実験を行なった.被験者には仮想拘束運動解析システムから手先に提示される任意方向からの反力負荷の大きさを知覚させ,口頭試問形式により回答させた.その結果,人間は同じ大きさの反力負荷に対しても方向によって感じ方が異なるという,手先力知覚特性に方向性が存在することを発見した.また,その方向性は概ね楕円で表現できることを示せた.そしてさらに,その知覚楕円の方向と大きさは,上肢姿勢により変化することを合わせて示した. 2.知覚特性と運動特性の相互関係 先に提案した生体関節トルク特性に基づく可操作性理論を用いて,上肢姿勢維持における手先発揮能力との関係を解析した.その結果,知覚楕円と操作力楕円の長軸はほぼ同じ向きとなることを示し,大きな力が発揮できる方向には軽く感じる結論を見い出した.そしてさらに,上肢運動における主な筋群から筋電位信号を計測し,反力の主観知覚値と筋活動レベルには比例関係があることを明らかにした.
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