研究概要 |
本研究では,運動関連電位(MRCP : Movement-Related Cortical Potential)を用いて,動作開始前にすでに作業の完了時の精度を推定可能かどうか検討することを目的とする。人間の随意運動の開始前に記録される,運動準備時の活動と考えられる運動前陰性緩電位(運動準備電位)と,動作の遂行精度との関係を調査することにより,動作前の生体情報をシステムの予測制御に利用することが可能かどうか調査する。 本年度は,運動準備電位と作業成績(作業精度)との関係を調査することを目的とした.結果として,実験時及び解析時にいくつかの課題が生じた.使用したタスクについては,対象とする動作以外の要素が脳波に影響しないようできるだけ単純なものとして,指でターゲットをタップする「到達運動」を選択したが,運動計画への反映が少ない動作であったため,運動準備電位には有意な効果は確認できなかった.また,単純な作業であったためにターゲット選択の作業精度に大きな差異が現れなかった.よって,作業精度に準じて脳波のデータを振り分け加算平均を行うことが困難となる結果となり,データ解析にも遅れが生じた.したがって,次年度では実験を修正して再実験及び再解析を行い,前半中に成果を発表することを目指す. また年度後半には,運動準備電位と動作過程の弾道運動成分との関係を調査することとする.動作解析システムを利用し指の動きを高速度カメラで観察し,このデータより弾道運動成分と修正運動成分に分類する.特にこの弾道運動成分が動作前の行動計画と関係があると考えられるため,この関係性を検討する.
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