本年度の研究実績概要は以下の通りである。 1)化学物質濃度依存型移動ロボットによる交通流実験 「移動体が蒸発する化学物質を散布しつつ、その移動速度が化学物質の濃度に依存する系において、移動体の密度に応じて流量が急激に増す現象」が見られることが報告されていたが、この報告に基づいて西成らと共同で行ったロボットによる交通流実験および解析結果が論文掲載された。 2)化学物質を介して情報共有する群ロボットによる分業 群ロボットが有用性を発揮するひとつの作業形態である分業では、作業内容に応じた労働力の分配が必要となる。作業の切り替えには何からのコストが発生することから、労働力の分配が最適である場合は、各個体の作業変更頻度を低くする一方で、何らかの理由により労働力にアンバランスが発生した場合には、作業変更頻度をあげ、速やかに再配分が行われるような柔軟な機構…を導入する必要がある。本研究では、作業切り替えを確率的に行う単純確率モデルをベースとして、化学物質を導入した確率変動モデルを提案し、「目標比率からの誤差」「外乱に対する応答性」などの特性解析を通して、その有効性を示した。 3)アルコールコミュニケーション型ロボットシステムの試作 これまでの研究で扱ってきた化学物質は主に「コンピュータシミュレーション上での扱い」や「プロジェクタで投影したCGを用いて化学物質を光信号で擬似的に表現するV-DEARシステム」などによって仮想的に表現したものであった。しかし現実世界ではシミュレーションだけでは捉え切れない側面が多くあることから、実際の化学物質を扱う必要がある。そこで化学物質としてアルコールを取り上げ、アルコールセンサーを有するロボットの開発をおこなった。本年度は極めて基本的な動作を確認することに主眼を置き、アルコールのラインを追跡するシステムの開発をおこなった。
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