本年度は主に化学コミュニケーションによる群ロボットシステムの応用的な側面に焦点を当てた研究を行った。 1) 化学コミュニケーションを用いた動的な迷路への適用 群れロボットに向いている作業として分業、探索、運搬などがあげられる。本研究では探索問題に注目し、迷路を協調的に解く問題を通して化学コミュニケーションの有効性について論じた。ゴールが明示的でない迷路を効率的に解くときにポイントになるのは、(1)袋小路を見つけること、(2)見つけた袋小路の方向に進まないことである。そこで袋小路に至る直前の分岐点において、化学物質を散布することで袋小路の有無をマーキングする。探索中のロボットがこの物質を検出した際、その濃度に応じた確率で袋小路の方向への移動を行わないものとする。揮発性のある化学物質をマーカーとすることで、迷路の構造が動的に変化する場合でもロボットが協調して迷路を解くことができる。 2) アリの化学コミュニケーションの特性のモデル化 接触によりコロニーの秩序を保っていることを行動レベルで見ることができるトゲオオハリアリの女王とワーカーの関係をモデル化した。このアリは女王がコロニーを形成するすべてのワーカーとある時間内に接触(化学物質の介在)することで秩序を保っことが知られている。この行動を簡単なダイナミクスで記述することができた。また、親子型掃除ロボットシステムへの応用を念頭に置いた実験に着手することができた。
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