研究課題
放射光施設において、タンパク質の結晶構造解析の高効率化のために開発したタンパク質結晶自動交換システムの高度化・安定化に関する研究を行った。タンパク質結晶は液体窒素中で保存されているため、本研究で使用しているロボットは、液体窒素中のタンパク質結晶が納められているカセットにアクセスする必要があるが、液体窒素中では低温のため、特に金属製の部材が収縮しカセットの位置を把握することが困難になる。そこで、まずロボットの手先に6軸力センサを取り付け、開発中のソフトウェアで随時手先にかかる力を検出できるようにした。カセット等の液体窒素デュワー内のコンポーネントに触れた時の力およびトルクを検出し、その時の座標から、カセットの位置の検出を行った。この位置データを元に、液体窒素中でタンパク質結晶の出し入れを行ったところ成功率は92.6%であった。次に液体窒素デュワー内のコンポーネント(特にカセット)について詳細に調べたところ、傾いていることが分かった。そこで位置だけではなく傾きも考慮して、校正を行うための方法について検討し、同様の動作を行ったところ、成功率を97.3%に上げることに成功した。さらに、タンパク質結晶の出し入れに必要な磁石ダンベルの液体窒素中での高さ補正等、力トルクセンサを用いなければできない校正を行うことで、成功率を99.97%にあげることができた。本システムは実際に高エネ機構の放射光施設にあるX線回折実験装置に組み込まれており、実際に構造解析の第一線で稼働中である。成功率を99.97%にまで高めることで、貴重なタンパク質結晶を壊すことなく、安定して交換する作業が実現できている。
すべて 2007
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American Institute of Physics : Conference Proceedings, Synchrotron Radiation Instrumentation 879
ページ: 1924-1927