放射光施設において、タンパク質結晶構造解析の高効率化のために開発したタンパク質結晶自動交換システムの高度化・安定化に関する研究を行った。タンパク質結晶はカセットに納められ液体窒素中で保存されている。極低温であるためカセットの位置は液体窒素があるときとないときで変化するため、昨年度、ロボットの手先に6軸力センサを取り付け、液体窒素中のカセット等に触れたときの座標からカセット等の位置・方向の検出を行った。その結果を用いて校正した場合、ユーザー実験における失敗率は、5.7%から0.49%に低減した。 本年度は、まずカセット等の接触検出方法の検討を行った。ロボットハンド先端でカセット等に触れた瞬間ではなく、触れた後離れる瞬間を検出する方が検出位置のばらつきが少ないことが分かったので、校正ソフトウェアを修正した。2007年度4-6月期の失敗率は前年度と同じく0.49%であったが、修正後の10-12月期は0.27%に低下した。さらにデュワーを交換することなく液体窒素デュワーの乾燥を行えるようにしたことで、デュワー内のカセット台の安定性が増し、次の1-3月期には0.11%を実現することができた。現在、結晶の全自動連続測定システムの開発を行っており、本システムはその中核をなすものである。液体窒素内には285個の結晶がセットできるため、0.11%の失敗率であれば実用に耐えうる。一方、米国の多くの研究所で用いられているALSカセットに対応したユニパックにも対応するために、カセット台の改造を行った。合わせて、校正ソフトウェア、ユーザー実験用ソフトウェアの修正も行った。本システムは高エネルギー加速器研究機構の放射光施設内のビームラインに組み込まれており、実際に構造解析の第一線で稼働している。本研究により失敗率を低減することができ、貴重なタンパク質結晶の安定な交換作業が実現できている。
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