研究概要 |
操作性の高い人-機械協調システムを開発するには人の運動状態をオンラインで推定しながら,逐次的に最適なアシスト操作量を計画する制御系を設計する必要がある.しかし,推定されるシステムパラメータは通常,実システムのパラメータとは異なるため,推定システムパラメータに基づいて計画された最適アシスト制御入力では制御系を含めたシステム全体の安定性を保証することができず,場合によっては発振を引き起こしてしまう危険がある.そこで,18年度では,この問題を解決すべく,人の運動状態を推定する適応推定器を,拡張カルマンフィルタと同様の方法に従って未知パラメータを状態に含め,状態オブザーバを構成することで実現し,推定された状態(未知パラメータ)を用いて最適制御を逐次的に加えるようにアシスト制御系を構成し直した.そして制御系を加えたシステム全体の安定性が保持されるためにフィルタゲイン及びフィードバックゲインが満足するべき条件を導出した.システムの安定性には,各時刻で最適化を行う評価関数の形が重要な役割を演じる.導出した安定化条件はこの評価関数内のウェイト行列に関するリッカチ不等式と,リアプノフ不等式によって与えられる.本安定化条件は,現在までのシステムパラメータ情報のみを使用してモデル予測制御を行った場合の安定化条件を提示するものであり,制御理論的にも新しく,有効性の高い結果となっている.しかし,本安定化条件を満たすように制御系を構成するには,実現されるアシスト装置は非常に保守的な設定のものに限られてしまい,作業者の操作性を著しく低下させる危険性がある.そこで,現在,逐次的に評価関数のウェイトを変更することで,より作業者に違和感を与えずに,状況に応じた最適なアシスト操作を行うことのできる制御系の構成及びその有効性・安全性に関する実験的な検証を行っている.
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