放電波形によるラジカル生成制御では、放電のどのフェーズでラジカルが生成されるかを知る必要がある。そこで本研究では、OHラジカルとOラジカルのレーザ誘起蛍光法(LIF)による計測と、オゾンのレーザ吸収法による計測を行った。その結果、正極性放電では各ラジカルの密度分布が針電極近傍で最大になり、平板電極に近づくにつれて密度が減少することが分かった。これは各ラジカルが二次ストリーマによって主に生成されていることを示している。一方負極性放電では、放電ギャップ間でラジカル密度が比較的均一な分布となり、正極性放電とは異なる機構でラジカルが生成されている可能性が示唆された。この違いをさらに詳細に検討すれば、ラジカルの種別密度を、放電波形により制御することがある程度可能になるかもしれない。実際に直流コロナ放電では、正負極性の違いによりオゾン生成量に大きな差が生じることが知られており、極性の違いによる放電の性質の違いと、それに伴うラジカル生成量の違いを詳細に調べることは、本研究に代表される放電によるラジカル生成に大きな知見を与えるものと期待される。これに関連して、正負パルスコロナ放電の進展の様子を、5nsゲートの極短ゲートICCDカメラおよびストリークカメラを用い、正極性および負極性のコロナ放電が進展する様子を観測した。正極性放電では、よく知られるように一次ストリーマから二次ストリーマを経て放電が進展するが、負極性放電では一次ストリーマのあと、二次ストリーマとは異なる機構の進展が観測された。 放電のガス温度も、ラジカルの生成には重要な要素である。放電時の温度を放電の発光分析で計測し、放電後のガス温度をLIFにより計測した。その結果、放電中はほぼ室温程度だが、放電後に温度が増加する傾向が観測された。 放電波形制御用のパルス幅可変の高圧電源は、資材を揃えて装置を作成中である。
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