当初予定通り、パルス幅をナノ秒オーダで制御できる高圧パルス電源を作成し、パルスコロナ放電のパルス幅を変化させたときに、活性種の生成エネルギー効率がどのように変化するかを調べた。具体的には様々なパルス幅において(1)レーザ誘起蛍光法(LIF)によるOHラジカル密度計測、(2)紫外線吸収法によるオゾン濃度計測、(3)発光分光法による励起準位N_2(C)およびOH(A)密度計測、および(4)間接励起発光分光法によるN_2(A)密度計測を行った。その結果、OH、オゾン、N_2(C)、N_2(A)は、パルス幅が短いほど生成エネルギー効率がよいという結果が得られた。このときパルス幅が閾値以下では、ラジカル生成量は放電エネルギーと共にほぼ線形に増加するものの、閾値以上では放電エネルギーを増やしてもラジカル生成量がほとんど増えない現象が観測された。すなわちパルス幅が一定値を越すと、その部分は特定の活性種にとっては生成に寄与しないことが示された。また閾値以下でも、一次ストリーマと二次ストリーマによる生成効率は大きく異なり、ラジカルの種類によっても異なる値を示した。一方OH(A)については、パルス幅によらず生成エネルギー効率はほぼ一定という結論が得られた。以上の結果から、パルス幅を制御することで、ラジカルの種類別の生成量をある程度制御できる可能性を示すことができた。この他、ラジカル生成量の測定に欠かせないラジカル計測技術の開発も平行して進め、これまでストリーマ放電では計測できなかったN_2(A)の直接計測に成功した。測定には可視域のレーザ誘起蛍光法を用いた。
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