研究概要 |
材料プロセス分野における次なる放電プラズマ技術として大気圧グロー放電に着目されている.本研究課題では,プラスチック材料のぬれ性の向上,薄膜堆積,プラズマプロセスにおけるアッシング,液晶基板の洗浄,空気浄化技術などの幅広い分野へ向けた本放電の応用を行う上で問題となってくる「放電の安定性」に着目し,その安定性を計算機シミュレーションの立場から解析をし把握することを目的としている.上記背景の下,本年度は(1)反応速度定数や電子衝突断面積などの最新情報の調査,(2)本研究課題で用いる放電プラズマ流体モデルの構築を中心に研究を行った.(1)に関しては,放電時にバッファガスとして利用される希ガスや,放電によるナノチューブ創製時に利用されるハイドロカーボン系ガス(CH4,H2,C2H2,C2H4,C2H6,C3H8)に関しその基礎データ(電子衝突断面積や各種反応レート係数など)に関する最新のものを収集した.(2)に関しては,連続の式,運動量保存式,エネルギー保存式,ポアソンの式,回路方程式から構成される放電プラズマ解析用のシミュレーションモデルを構築し,(1)で得られた基礎データを元に,放電ガスをArとした場合,ならびにCH4/H2混合ガスの場合の2ケースに関しシミュレーションを行い,その基本構造に関し解析を行った.特に重要な結果として,CH4/H2混合ガスの場合において,生成されるプラズマ内の粒子種に関し,放電ガス(CH4/H2)の密度に対し,無視し得ない程度のハイドロカーボン系ガス(C2H2,C2H4,C2H6,C3H8)の存在が確認され,本ガス種が放電特性の決定に重要な役割を果たしていることが本シミュレーションにより示唆された.
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