次なる放電プラズマ技術として大気圧グロー放電(以下、APGD)が有望視されている。本放電は、大気圧下で生成されるグロー放電であり、本放電の特徴として、1.低ガス圧放電時に必須であった真空装置が必要ないためコストが低く抑えられる、2.低ガス圧放電と比較して化学的反応性が約百万倍も高く迅速な処理が可能である、3.放電電極に対し径方向に均一な放電であるため大面積に均一処理を行う応用に向く、などが挙げられる。これら利点を利用し、材料プロセス分野を中心とし幅広く応用されている。しかし、今現在、このAPGDの基礎過程に立脚した内部構造を含めた放電基礎特性は、未だ十分に解明されておらず、また本放電は、その放電条件により、タウンゼント放雷や、そこからアーク放電へと導くフィラメント状放電への遷移など、その様相を大きく変える。したがって、放電の安定性に関し調査を行う必要がある。本年度は、大気圧ヘリウムガスグロー放電プラズマの空間1次元モデルを開発し、ミリメートルオーダのギャップ時の直流放電時の放電基礎特性と放電ガスが放電形態(状態)に及ぼす影響に関し解析を行った。印加電圧の増加に対し、その電流-電圧特性は、下に凸となる特性であった。本特性の左側と右側の傾向は、低圧直流グロー放電における前期グローと異常グローとに対応する。両電極温度を300Kから800Kまで増加させた際の電流-電圧特性は、電流増加に対し300Kから400Kまでは下に凸の特性を示し、それ以上では緩やかな増加特性を示した。これは、電極温度がある一定以上に達すると、アーク放電への遷移の途中段階である異常グローへ変化することを示しており、このことから放電安定性を考える場合には、放電空間内のガスの温度上昇のみならず、イオン衝撃に伴う電極へのエネルギー移行(電極温度上昇に関与)を如何に抑制するかが重要であることが示唆された。
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