本研究の目的は帯電した微細な液滴を静電気力によって比接触で気相中に保持し、それを反応場として生体高分子の化学反応を行わせる手法の確立を行うことである。本手法は、サンプルの反応器との接触を排除することができるので、反応器壁面への吸着や壁による汚染等を防ぐことが可能であり、コンタミネーションや試料の損失が深刻な問題となる極微量試料のハンドリングに適している。そのために、微細な液滴を静電気力によって非接触で気相中にトラップする手法の検討を行い、安定に長時間液滴を保持できる電極構造、印加電圧、液滴の供給方法や液滴の帯電量に関する基礎的な実験条件を見出すことを目的とする。 本研究では、磁場を必要とせず、交流電場のみで帯電粒子のトラップを実現できるPaulトラップを採用した。Paulトラップで通常用いられる回転双曲面電極の代わりに作成が容易な円筒形電極を用いた装置を作成した。高電圧を印加したノズルの先端から液滴を噴出させることにより、静電噴霧によって帯電液滴を生成する装置を作成し、印加電圧や空気の流量と生成液滴の状態との関係を調べた。発生させた帯電液滴をガス流でトラップ装置内に輸送し、トラップすることを試みた。トラップ用高電圧の電圧値や周波数が液滴のトラップに及ぼす影響を実験的に調べた。
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