研究概要 |
単一のシリコン結晶欠陥がダイナミックRAM(DRAM)の微細シリコンMOSトランジスター(Tr)で観察される可逆2値現象Variable Retention Time(VRT)と関係しているとする理論を提案しの電流検出電子スピン共鳴分光(EDMR)法の観察によれば、Tr中にはシリコン空孔-酸素複合欠陥(V_2O_x欠陥)が残留している。Trの電気的評価からVRT欠陥準位を求めたところ、V_2O_x欠陥のエネルギー準位と一致した。次にV_2O_x欠陥準位を減らす(欠陥自身を減らす、欠陥準位をフッ素で終端する)ことを試みてみたところ、VRTも減少することを確かめた。以上の結果よりV_2O_x欠陥とVRTとの対応関係が濃厚になった。これらはApple.Phys.Lett.や2006年IEDM(Int.Electron Devices Meeting)などで発表された。さらに、この結果はEDMRの欠陥検出感度が数個程度にまで及ぶ可能性を示唆している。通常、VRTは全Tr中の0.01%以下で観測きれるので、例えば本研究ですでに評価した10,000Tr集合の場合、VRTを起こすのはせいぜい1.2個のTrということになる。言い換えれば、この1-2個のTrに入っていた1-2個のV_2O_x欠陥をEDMRは検出したことになる(事実、V_2O_x欠陥信号は限られた配向のものしか検出されていない)。これを確実に証明するには、例えば、VRTが熱活性化する80℃以上の温度ストレスとEDMRスペクトルのV_2O_x欠陥信号との間の対応をとればよいと考えられる。そこで、H18年度はこのような高温実験が可能な測定システムの開発も行い、稼動試験を完了した。H19年度はこのシステムを使って、VRTの2値状態のEDMR観察を行う予定である。
|