(1)表面ナノ細線構造の制御 ZnO(10-10)成長表面上に形成された表面ナノ細線構造体の成長機構は、GaAs(001)ホモエピタキシャル成長と類似した機構を示す。薄膜の成長初期段階は2次元成長を呈すが、ある膜厚以上で3次元成長に移行することが高速電子線回折(RHEED)及びAFM観察から見出した。ホモエピタキシャル成長下での2次元から3次元成長のモード変化は、シュワベールバリア効果が関与している。また、透過電子顕微鏡(TEM)を用いた電子線解析(SAD)パターン及び収束電子線回折(CBED)パターンから、表面ナノ構造体は、歪みを内包していない単結晶体で、細線構造は[0001]方向に沿進していることを同定した。さらに、ナノ細線構造体をテンプレートとして、その上にMg_<0.12>Zn_<0.88>O/ZnO多重量子井戸構造を作製し、量子井戸内に閉じ込められた2次元電子の輸送特性を評価した。結果として、大きな異方性をもつ2次元電子伝導性が観測された。 (2)磁性半導体Zn_<1-x>Co_xOの基礎的研究の評価 強磁性特性に関して、磁性特性と残留電子濃度との相関関係を調べた。Zn_<1-x>Co_xO層は、ZnO基板のZn及び酸素極性面上にそれぞれ成長させ、系統的に強磁性特性を詳細に評価した。強磁性の飽和磁気モーメントの大きさは、電子濃度に系統的に依存していること見出した。これは、電子キャリアが強磁性発現に密接に関連していることを示唆している。現在、TEMを用いての結晶構造解析を行っている。さらに、Zn_<1-x>Co_xO層の2次元成長をZn極性面上で達成し、さらに、酸素分圧変調法を提案し、ZnCoO/ZnO超格子構造の形成にも成功した。この成果は、Zn_<1-x>Co_xO層とZnO層とのヘテロ界面を活かした量子構造の作製に重要な基礎的技術である。 本年度の研究において、表面ナノ構造の成長機構及びZn_<1-x>Co_xO層の強磁性特性の発現プロセスを解明できる基礎的結果を得ており、来年度の電界効果素子への適用に向けて価値ある結果である。
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