本年度は、一般に使用されている低出力型マイクロ波プラズマCVD装置を用い、高品質なダイヤモンドを高速に合成する事を試みた。プラズマ密度を一般の合成条件に比べて10倍にすることにより、非エピタキシャル粒子が存在しない良好な単結晶薄膜を得ることに成功した。成長速度も大きくなっており、プラズマ密度を高密度化がダイヤモンドの高品質・高速合成に不可欠であることが明らかになった。この高密度プラズマ条件で合成する事により、高品質・低抵抗率ダイヤモンドの伝導率制御も大凡可能となっており、詳細を次年度に実施する予定である。 高濃度にアクセプター不純物(ホウ素)を取り込んだ試料について、Hall測定による電気伝導度測定、またカソードルミネッセンス(CL)による発光分光測定を行った。Hall測定からは、ホウ素濃度が10^<19>cm^<-3>以上と高いにもかかわらず、室温での移動度が830cm^2/Vsと大きかった。この結果に対して様様なキャリヤ散乱因子を考慮したキャリヤ輸送シミュレーションを行ったところ、高濃度層の下層(即ち、窒素を含有する高圧合成基板上)に緩衝層として堆積させた超低濃度層中もキャリヤが走行し、室温以下の温度領域ではこの層でのキャリヤ輸送が無視できないことが明らかになった。CL発光特性からは、高濃度時に特徴的ないくつかの発光ピークを紫外線領域に見出した。不純物バンドの形成を示唆した発光パターンとなっており、高濃度ダイヤモンドに関する新たな知見が得られると思われる。 一方で、ダイヤモンド形状制御のために、本年度はRF放電による酸素プラズマエッチングを新たに採用したが、Alマスクによる選択エッチングが期待通り行われず、良好なダイヤモンドナノロッドの形成に至らなかった。今後、マスクとエッチング条件の最適化が必要である。
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