研究概要 |
本研究では,脳腫瘍の温熱治療用微細径マイクロ波アンテナにおいて,そのアンテナ軸方向(アンテナ刺入方向)における発熱領域の制御法について検討を行っている.これまでの検討により,刺入式マイクロ波加温用アンテナの最も基本的な構造をもっ同軸スロットアンテナでは,加温対象腫瘍のサイズに応じた発熱領域の制御は容易でないことがわかっている.そこで本研究では,同軸ダイポールアンテナを導入し,数値計算によりその特性を検討した.この同軸ダイポールアンテナは,同軸スロットアンテナのスロットの両側に電気的に接続したスリーブを設けたものであり,このスリーブの長さを変化させることにより,加温領域形状を変化させることができると考えられる.そこで数値解析を用いて,スリーブ長と加温領域のアンテナ軸方向での長さの関係を調べたところ,両者はよく一致することがわかった.すなわち,スリーブ長をアンテナ軸方向での加温したい長さに設定することで,目的部位のみを加温可能であることがわかった. また,上記のマイクロ波アンテナをフレキシブルなケーブルを用いて製作したフレキシブルタイプのアンテナでも,生体内の加温が十分に可能であることがわかった. さらに,次年度では上記のアンテナの加温特性を実験的に評価する必要があるため,その実験系についても基礎的検討を行った.組織内加温用アンテナの特性を評価する上で最も重要な指標であるSAR(specific absorption rate[W/kg]:比吸収率)は,これまでに開発されている生体等価ファントム(疑似生体)で測定可能である.そこで,より実際の生体組織に近い状況下でのアンテナ周辺の温度上昇分布の評価を行うため,生体内での血流をも模擬した生体等価ファントムの試作を行い,本研究で検討を行っている同軸ダイポールアンテナの加温性能評価に使用可能であることを確認した.
|