従来分岐導波路構造を形成するにはフォトリソグラフィーとエッチングを組み合わせたプロセスが用いられているが、マスクや真空引きが必要なため高コストなプロセスである。また3次元に分岐する構造を得るには、多段階で複雑なプロセスの必要がるため困難である。一方本研究の自己形成ではファイバ端から出射される光により導波路が形成されるため、短時間プロセスであり、簡便かつ低コストである。またファイバの高次モードを選択的に励起することで分岐導波路が容易に作製できる。分岐が生じる原因やその過程、形成前後の屈折率分布はまだ解明していないが、デバイスに適用する場合、設計や低損失化に必要となる。また実際に作製する前に数値シミュレーションを行うことが望ましい。そこで本研究では自己形成導波路の分岐現象を解析し、数値シミュレーションのためのモデルの確立を目的としている。本年度は特に高次モード励振を再現性よく光ファイバに結合する方法に重点を置き、研究を行った。 1.高次モード励振用光ファイバ結合器の製作 結合器を設計する前に予備実験として手動で調整を行ったが、高次モードを安定して励起することは困難であった。そこでレーザを波長488nmから457nmのものに変更したところ比較的励起しやすいことが判明した。そこで457nmでの自己形成の最適条件を模索した。さらに微動ステージを組み合わせることで、高次モード励振用の光ファイバ結合器を作製した。この結果分岐導波路形成の再現性が格段に向上した。また2分岐だけではなく4分岐も作製できるようになった。 2.数値シミュレーション 光ファイバの高次モードの諸条件や分岐角度を見積もるために、19年度に予定していた数値シミュレーションソフトを購入し、理論計算を行った。特に上述lの4分岐導波路を作製するための入射条件を検討するのに大きく役立った。
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