まず、波長変換素子について説明する。今年度は特に複合導波路構造の接続部に関する検討を行った。結果としては、テーパー型が最も良好な接続効率を有し、その中でもテーパーの幅が緩やかに狭まる構造によって出力される第2高調波のパワーが向上する。つまりはインピーダンス不整合の全体量を減少させて、効率よく接続させるという、従来の高周波回路理論と大きな相違は無い。その結果、波長変換素子に限らず、複合導波路構造を利用すれば、複数の波長信号を扱うフォトニック結晶光回路を実現できる可能性を示している。波長変換素子について話を戻すと、本研究により提案することができた波長変換素子は、他のフォトニック結晶波長変換方式と比べて構造や作製が複雑となるものの、フォトニック結晶特有の良好なフィルタ特性を用いるので、SN比を高く取ることができる。 次に光スイッチについて説明する。スイッチングを行うためには十分な領域に十分な直流磁場強度を印加する必要があり、微細領域に対する外部直流磁場印加の方式に関し、カーボンナノチューブで構成したコイルを配置する方法を本研究申請の際に挙げた。しかしながら3次元のシミュレーションは計算機性能のため十分な精度が得られなかった。そこで、2次元モデルの検討のまま、磁場印加のON/OFFに対するスイッチングの応答速度に切り替えた。サイズや磁場強度など、具体化しなければならない事項がまだ残されており、今後の課題としている。さらに磁場印加方式に関しても、デバイス製作の観点からさらに検討を進める必要がある。
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