本研究の目的は、共鳴トンネリング現象を用いた高効率なフォトニック結晶がり導波路の開発である。本研究ではSilicon on Insulator(SOI)基板のシリコン層に半径300〜400nmの空洞が周期的に配置された2次元構造のフォトニック結晶を作製することを考える。この空洞を導波路構造に沿って取り除いたパターンを作製することによりその部分を導波路とした光回路素子を構成することができる。本年度は、設計パラメータの同定を数値シミュレーションで行い、次にデバイスの作製を試みた。まず、数値シミュレーションで導波モード解析を行い、導波路中の進行波と後進波が結合してカットオフ領域が生じることによるシングルモード領域の帯域が最も大きくなるような構造パラメータを算出した。そして、これらのパラメータを用いた曲がり導波路の解析を行い、共鳴トンネリング現象により高効率な光路変換が可能であることを確認した。次にこれらの設計パラメータを用いた導波路を作製するための作製条件の最適化を行った。ここでは、微細なパターンをシリコン基板に転写するための、電子ビーム描画リソグラフィ工程における条件、および、このレジストパターンをシリコン層の空洞構造に転写するためのリアクティブイオンエッチング工程における条件の最適条件の調査を行ったが、現在のところまだ所望の構造パラメータのデバイスが実現していない。そこで来年度は、さらなる作製条件の調査および、試作されたデバイスの特性評価旨を行う予定である。
|