本研究では、バンドギャップエネルギーが半導体の中で最も大きいAIN系ナイトライドによる高性能デバイスを目指すことを目標に2ヵ年研究を遂行している。平成18年度は前年度までに達成したpn接合を用いることによって実現したAlGaN/GaNによるノーマリーオフ型FETの高性能化およびAIN系ナイトライドの結晶成長の検討を行なった。主な検討項目と、その概要について以下に示す。 1.理論的なシミュレーションを行った。 パワーデバイスはノーマリーオフ動作が必須であるため、その動作に必要な、層構造や不純物濃度を決定し、それを実験的に検証した。特に、本研究ではボアソン方程式と電流連続の式をセルフコンシステントに解くことによって、ノーマリーオフ実現に必要なAlIGaNの条件、不純物濃度分布、デバイスの層構造等を検討した。 2.理論結果と実験結果の検証 シミュレーションは、物性値等を使っているため、実際の結果との対応が重要である。本研究は、多数のデバイスを作製し実際の結果とシミュレーションの結果を対応させた。その過程で、不純物濃度を精密に測定する必要があるためSIMS等の評価は外注で実施した。その結果として、1で行なったデバイス設計の妥当性、および設計の指針を明らかにし、学会等で報告した 3.作製したAlGaN/GaNノーマリーオフ型FETのデバイス特性の評価を行なった。 On/OFF比、低オン抵抗、スイッチングロスの評価を行なった。その結果として、On/Off比が7桁、低オン抵抗、低スイッチングロスデバイスが実現できていることを明らかにし学会等で報告した。 4.AIN系ナイトライドの結晶成長の検討を行なった MOVPE法によるAINナイトライドの結晶成長を検討し、高品質結晶を得るための指針を得た。
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