研究概要 |
シリコンにキャリアを注入するとプラズマ分散効果によって屈折率が変化することが知られている.通常その効果は小さいが,フォトニック結晶微小光共振器を用いると小さな領域に強く光を閉じ込めることが出来るため,効率的にその効果を利用することができる.屈折率を変化させることによって光変調を実現できる点に着目し,シリコンフォトニック結晶共振器にPIN構造を集積する構造を作製することを目的として研究を遂行した.本年度は作製プロセスの個々の技術の確立およびフォトニック結晶中でのキャリアの挙動の解明を目指し,以下の知見を得た. (1)シリコンフォトニック結晶にイオン注入し,さらに適切なアニーリング処理を施すと,転移ループの生成によってフォトニック結晶共振器での実効キャリアの寿命を大幅に低減できることを明らかにした.この効果を利用して,シリコンフォトニック結晶微小光共振器を用いた光スイッチの速度を従来の1/3程度まで高速化した. (2)イオン注入によって生成する欠陥に起因して増大する光伝播損失の定量的な評価を行った.適切なアニーリング処理を施すことによって比較的高濃度のイオン注入であっても伝播損失を大幅に低減させることができることを明らかにした. (3)フォトニック結晶共振器中でのキャリアの挙動を明らかにするためにデバイスシミュレータを作製した.現時点までに,光変調の速度を決める実効キャリア寿命はキャリアのバルク寿命ではなくキャリアの拡散速度に支配されていることを明らかにした.そのためにキャリア濃度の時間変化はキャリア密度の初期分布に大きく依存することがわかった.
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