研究概要 |
IP電話は,本来リアルタイム通信に不向きなベストエフォート型のIPネットワークにより音声通信を実現するため,パケットの欠落が原理的に不可避であり,こうした通信上のエラーが音声波形の正確な伝送を妨げ,通話品質を低下させるという問題を抱えている.本研究では,こうしたエラー対策に焦点を当て,ステガノグラフィと呼ばれる情報埋め込み技術を応用することで,従来よりも優れた通話品質を提供する手法に関して検討している. 本年度は,情報埋め込み技術の新たな応用として,音声信号の広帯域化によるIP電話のハイファイ化について検討を行った.昨今,SkypeなどのIP電話サービスに代表されるように,ハイファイIP電話が次第に普及してきている.こうしたアプリケーションで採用されている方法とは異なるアプローチとして,本研究では,情報埋め込み技術を従来の信号処理手法と組み合わせることで,より効果的に音声信号の広帯域化が実現できることを示した. なお,情報埋め込み技術を適用すると本来の音声信号を変化させてしまう可能性があるため,これが雑音となって,場合によっては音声信号の劣化を引き起こしてしまうという問題がある.そこで,本年度は,電話音声の特徴を利用し,情報を埋め込んでも音声信号の劣化がまったく生じないロスレス方式のステガノグラフィについても検討を行った. なお,以上の研究と並行して,画像に対する情報埋め込み技術についても検討を行った.本年度は,数論変換によってディジタルデータのセキュリティを保障するための改ざん検出技術の高度化について,理論的な検討を行った.
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