研究概要 |
本年度は,過標本化フィルタバンの応用としては、音響信号の再生速度変換とピッチ変換についての検討をした.ここでの再生速度変換とは,音響信号の音高や音質を変えずに再生速度を任意に変換する処理のことである.この処理は,楽器の練習効率の向上や楽曲編集に役立つと考えられる.音声信号を対象とした場合,音高情報であるピッチ(基本周波数)を信号から抽出し,それを用いて波形を伸縮させることで再生速度変換やピッチ変換を行うことができる.しかし,ピッチに基づいた手法を音響信号の再生速度変換にそのまま適用した場合,音高や音質が変わってしまう.これは,音響信号は一般的に異なるピッチをもつ複数の信号の合成であるが,それにも関わらず,単一のピッヂのみを用いて再生速度変換処埋を行っているためである.そこで本研究では,音階に対応した完全再構成フィルタバンク(Perfect Reconstruction Filter Bank: PR FB)を用いて,音響信号を狭帯域に分割して再生速度変換する方法を提案した.また.ピッチ変換に必要なAR過程のパラメータ推定法を開発した.この方法では,狭帯域信号に対してピッチを抽出し,波形を伸縮させ,その結果を合成する.提案手洪によって変換精度が向上することを計算機実験によって示された.
|