周波数資源の枯渇および更なる高品質・大容量無線通信への要求に伴い、2010年を目処に第4世代無線通信システムの導入が検討されている。その際、利用される周波数帯はおおよそ5GHzとされており、アンテナが小型になるため、携帯端末にアンテナアレイを実装することが検討されている。このような無線通信の急速な発展を背景に、電磁波の人体に与える潜在的な影響が懸念されている。このため、国際機関ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)をはじめ、様々な公的機関が電波防護指針の策定している。その指標として用いられているのは比吸収率であるが、マイクロ波帯における主たる生体影響は温度上昇であることから、吸収電力量とそれに伴う温度上昇の定量関係を把握することが急務となっている。 本年度は、まず、この基礎特性を把握するために、1次元人体頭部モデルを構築し各組織の厚さを変化させ、平面波を入射させたときの吸収電力量とそれに伴う温度上昇の比の個体差について検討した。その結果、個体差による効果は30%に及ぶことを明らかにした。また、申請者が従来の研究で用いてきた解像度2mmの3次元人体頭部モデルを再分割し、1mmのモデルを構築し、5GHzまでの解析に対応できるようにした。更に、その高解像度モデルを用いてダイポールアンテナに対する基礎データを収集した結果、1次元モデルにより得られた知見と定性的には一致するものの、不均質性の影響が異なることなどを明らかにした。 このことより、3次元モデルを用いた解析およびそのデータ処理が必要であり、次年度以降、データを蓄積、処理してていく予定である。
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