周波数資源の枯渇および更なる高品質・大容量無線通信への要求に伴い、2010年を目処に第4世代無線通信システムの導入が検討されている。その際、利用される周波数帯はおおよそ5GHzとされており、アンテナが小型になるため、携帯端末にアンテナアレイを実装することが検討されている。このような無線通信の急速な発展を背景に、電磁波の人体に与える潜在的な影響が懸念されている。このため、国際機関ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)をはじめ、様々な公的機関が電波防護指針の策定している。その指標として用いられているのは比吸収率であるが、マイクロ波帯における主たる生体影響は温度上昇であることから、吸収電力量とそれに伴う温度上昇の定量関係を把握することが急務となっている。 昨年度、基礎特性を把握するために、1次元人体頭部モデルを構築し各組織の厚さを変化させ、平面波を入射させたときの吸収電力量とそれに伴う温度上昇の比の個体差について検討した。その結果、周波数が3GHz以上であると、両者の比は上昇する傾向がわかっていた。本年度は、昨年度の知見と3次元モデルの影響を比較し、3次元では電波吸収が局在化するため1次元モデルの結果とは異なり、両者の比はほぼ一定であることを示した。一方で、耳翼により結果が大きく異なるこを示したが、現状では周波数により結果が一定ではなく、その不確定性は不明な点が多い。次年度は統計的な解析を加え、汎用的な結論を導き出す予定である。
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