前年度からの温度上昇解析手法の効率化を継続するとともに、3次元簡易モデル(球計上)を用いて3GHz以上の周波数帯においてSARと温度上昇の相関に関する基礎検討を行った。このことにより、人体頭部モデルの不均一性、頭部形状などによる影響を排除した上で、SARと温度上昇の相関、特にその周波数特性を調べることにより、「従来の周波数帯との相違があるのか?」に一定の解を与えた。具体的には、電気的な影響よりも熱的影響(具体的には熱拡散長)が上記の相関に最も大きく寄与することを明らかにした。そのため、従来の周波数帯と傾向に大きな相違はないものの、組織構造に起因する熱定数の不均一性の影響を受けやすいことを明らかにした。 次に、従来の移動体通信で用いられる周波数帯において相関に大きな影響を与えることが指摘されている「耳翼」の影響に限定して評価を行った。この影響にのみを適切に評価するために、立方体モデルに簡易な耳翼を付加したモデルを用いるものとする。これは電磁波の高周波化にともない、その近辺にのみ電磁界が集中することが予想されたためである。解析の結果、耳翼の影響は3GHz以下の周波数よりも大きいことがわかった。この主な理由として、3GHz以上ではSAR分布が耳翼付近により局在化することにより、その大きさ、形状により影響を与えやすいためであると考察した。 今後、より具体的な形状の携帯端末を考え、両者の関係を定量化していく必要がある。
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