本年度は、ブラインドMIMOチャネル推定の研究に必要な「マルチホップMIMOシステム受信モジュールおよび送信モジュール」と「独立成分分析によるチャネル推定プログラム」の開発に取り組んだ。 まず、システム構成モジュールとして、スロットアンテナ、PLL発振器、直交検波器を開発した。 開発したモジュールを用いてヘテロダイン方式のレシーバおよびトランスミッタを構成し、個々のモジュール毎に通信実験を試みた。通信実験の結果、数10cm程度と距離は短かったものの、通信が可能であることを確認した。より通信距離を伸ばすために、トランスミッタのパワーアンプの開発、レシーバのプリアンプの開発が必要であることがわかった。また、トランスミッタとレシーバ間の同期を取るための同期信号の分配方法を検討しなければならないことがわかった。開発した受信モジュールを用いて短距離通信チャネル推定実験をおこなった。送受信間の同期問題が未解決であるから、電波信号源として負荷変調方式の簡易送信機を分散型MIMO送信機に見立てて実験を行った。実験にはfastICAによるチャネル推定プログラムを新しく開発して用いた。新しく開発したプログラムがMIMO送信機から送信された未知信号をブラインド推定できることを確認した。しかしながら、源信号の相関が大変高い場合や、アンテナ問相互結合により観測信号の相関が高くなってしまう場合に推定精度が低下する現象が観測されたため、これらを回避するハード的、ソフト的な対策を検討しなければならないことがわかった。
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